「懐かしのショートショート」
…と言えば星新一!ですよね。 知り合いとお茶した時、本を処分しているんだわ、と何冊か持ってきてくれた。よかったらどうぞ、と。 ありゃりゃ、私も現在断捨離の真っ最中で自分の本を整理しているとこなんだけど…。苦笑。 でもその中に何冊か星新一の文庫本があり…。 「あら、Rさん星新一なんか読んでたの?」 「うん、割と好きよ」(Rさんは私より少し年上) しかも年季が入っていそうな文庫本… しかも新潮文庫ではありませんか! 懐かしいので少しいただいて来た。 あら、「妖精配給株式会社」に「きまぐれロボット」… 昔読んだかな。 星新一かあ。 中学の時流行ったなあ! 星新一の「ボッコちゃん」と平井和正の「超革命的中学生集団」(知ってる?)は必修だった…笑。 女子の間でね。 …男子はほとんど本、って読まないのよね…。 だから「コミュ不足」になってトシくった時困るのよ。苦笑。 私も、考えてみれば初めてはまった「文庫本」だ。 文庫本、って大人の響きがあり…憧れたものだ… 小脇にちょこっと見えるように持つだけでなんかインテリになった気分に…笑。 漫画以外に、こんなにおもしろいものがこの世にあるのか…と感動・感激の至りだったっけな…。 小学生の時はね、江戸川乱歩とか「小公女」とか一応読んだけど。 何と言っても自分でお金を出して「文庫本を買う」という行為にワクワクしたものだ。 少ないお小遣いの中から奮発するんだけど文庫本は安価だし、星新一は短編集だからすぐ読める割には読み応えも大いにあって。 一冊づつ、一話ごとワクワクして大切に読んだものだ。 次の話はどんな世界に連れて行ってくれるんだろう? 最後の一行のアレは?… そして期待を裏切られることはほとんどなく…。 自分の本棚に漫画以外の本が少しづつ並んでいくのもうれしかったし。 友だち同志で貸し借りしたり… なんてのも初めての経験だったかも。 漫画以外で。 大人になって引っ越ししたりするたびに本を処分もしたけど「ボッコちゃん」と「ようこそ地球さん」は今でも持っているわ。 時々、たわむれにパラパラとめくり、結局全部読んじゃったりして…。 ああ、新潮文庫のこの装丁! 真鍋博のこのイラスト! そうそう! やっぱりこのイラストでなけりゃ星新一ワールドじゃない〜笑。 そして昭和のテイスト… 昭和でありながらなんとなくモダンで… 「昭和」といより「西暦」だわね、うん。 ほんと、一言で言うと「クール!」。 思春期の頃。 いつも「ここではないどこか」に行きたかった。 現実から離れてどこか遠くに… 知らない街とか未来(?)とか。 そういった漠然とした憧れを満足させてくれたのが星新一だった。 ページをめくるだけでトリップさせてくれたものだ…。 (よりによって試験勉強中とか。笑) いつだかテレビで映像化してもくれたけど、やはり星新一は文庫本だわよね。 どこか知らない世界へ、「N氏」が手をとっていとも簡単に連れて行ってくれたっけ…ああ…。 で、また文庫本引っ張り出してめくって私の星新一ベストなどを選んでみよう。 *「鏡」(ボッコちゃんより) 13日の金曜日、合わせ鏡の向こうからやってきた悪魔が性悪の夫婦につかまって瓶の中に閉じ込められ…。 「おまえが悪魔か。一つ何かしてみろ」 「いいえ、何もできません。帰してください〜」 と哀願する悪魔に残虐の限りをつくし…。 なんかこの悪魔が情けなくて可愛くて。 「この日悪魔はしっぽに結び目を作られて痛がっていた」には爆笑!ツボ!ってやつ! *「ネチラタ事件」(ちぐはぐな部品より) ある研究所からうっかり拡散してしまったネチラタ菌、これによって世の中の人間は皆言葉がぞんざいになり…。 テレビのアナウンサーやデパートの女店員や医者やらが使う言葉がおかしくておかしくて…。 「やい、そこらをうろついてる有象無象ども…」なんて。 それ以来私はこの「うぞうむぞう」って単語が大好きに。笑。 *「テレビショー」(ようこそ地球さんより) 遠い未来… どのくらいだろう? 2000年代だろうか? もう過ぎちゃってたりして…笑 …そのいわゆる未来の子供の「失われた性欲」を取り戻すための大人たち涙ぐましい悲喜こもごも…。 政府推奨のエロ番組に、親が子供に話しかける… 「どうだい?これを見ておまえも少しは興奮してきたかい?」 「ええ、ぼくとても興奮してきましたよ」と答えるも、実はそれは親を心配させまいと気遣う子供のウソでした… そうと知っている親、隠れて涙を… 失われたモノと、とりまく人間のおかしさよ…。 *「幸運のベル」(午後の恐竜より) 商品にくじみたいなものが付いていて、「当たり」を待つ男の悲喜こもごも…。 実はとっくにくじに当たっていた男が、 「彼は大声で笑い、泣き、笑って、そしていつまでもいつまでも泣き続けた」のラストの一行にヤラレタ。 *「処刑」(ようこそ地球さんより) これ、一番好きかな。 ショートショートの中では割と長め。 近未来?の処刑としてどこだけの星に置き去りにされる男の話…。 囚人一人につき一つ、「銀の玉」を持たされ、その銀の玉にはボタンがあって、押すと水が一杯出てくる… その水にピンクの錠剤を一つ入れるとムース状の食事になり… しかし何回目か回数はわからないけどある時その銀の玉が爆発して死ぬ… その恐怖が処刑、ってわけ。 で、その銀の玉と男との「疑似会話」みたいなものが味わい深く…。 これは星新一にしては深みがあり、後味はよく、そしてやっぱりクール! 読んだ人にはいまさら説明も野暮なんですがね。 目を閉じれば今でも「ここではないどこか」に行ける。 そして夢中になった中学時代に… 10代の自分とその時の友だちや学校の教室、本屋さんに、「あの頃」にしばしトリップさせてくれる…。 何度断捨離しても、これだけは多分持っているだろうなあ。 あらま、私のボッコちゃん、黄ばみを通り越して紙はほぼ茶色だわ。 それでも、ね。愛しい文庫本。 (他にも井上靖の「氷壁」も茶色♪)
夏子
先日、マンションの1階に置いておいた鉢を何気なく見ると発見してしまった。 何を…。 イモムシだ! ひゃあ!…とびっくりするも、一目でそれはアレだ、って気づく。 アゲハの幼虫! ふたたびひゃあ! 子供の頃は何回か見た事はあったと思うけどもう何十年、大人になってからナマで見るのは初めてかも… しかも自分のトコで産まれたなんて…。 それは見事なアゲハの幼虫だ。 ほら、昔の最初の頃の新幹線みたいな形の。 ちょっとキモイ気持ちもあるけど、でもなんて美しい緑色だろう… 自然というのはどんな絵具もかなわない斯様に完璧な色彩を見せてくれるものか…。 (でもキモイ…やっぱイモムシだしさあ。苦笑) せっかくだからこのまま外に置いておこうか… でもだれか不心得者に殺されたり、カラスとかにやられたり食べられたりしたら可哀相だ… ぷりぷりして実に美味しそうだもの…。 で、知人の小2の男の子にあげることにした。 前から「虫博士」で虫に夢中だと聞いていたので「もしよければ…」って。 シーズンオフなので虫カゴが手に入らず、仕方なく手作りの箱を作って、うやうやしく幼虫殿をお迎えする… キンカンの葉っぱをたくさん入れて。 もちろんこんなことをするのは生まれて初めてだ。 キモイけどその子に渡すまで、しっかり守らなければ…。 早くその子が喜ぶ様子を聞きたい…。 無事夕方知人経由で渡したところ。 小僧、狂喜乱舞したそうな。 小学校などにアゲハの幼虫も多分いるらしいのだけど結構鳥とかにやられてなかなか自然には手に入らないそうな。 大喜びしてくれたって… よかったよかった。 「もっとない!?」と聞かれてふと思い出す…。 そういえば一か月くらい前、同じキンカンの鉢に黒い小さなイモムシが居たんだわ。 で、黒いから私てっきり蛾の幼虫だと思って… 殺しちゃった! 4,5匹はいたかな… ああああもったいない!! ネットで調べて、アゲハの幼虫は青虫になる前にはゲジゲジみたいに黒っぽい、と。 画像で確かめると、ああ、やはり私が踏んで(!)殺したあの小さなイモムシ…!! ごめんなさい〜〜〜。 あのコの兄弟だったんだろうな。 あのコだけはどこか、葉の影とかに隠れて惨事を逃れたんだ… あのコのきょうだいを、私は… あああ…なんてひどい事をしてしまったんだ…もったいない、せっかくの初めてのアゲハだったのに。 東京生まれの、私のアゲハ… 三茶産まれのさんちゃん…なんちゃって。 贖罪のつもりで大切に梱包し、小僧に渡す… しっかり育てて無事にアゲハに羽化させて、飛び立たせてあげてください… よろしく。 おもしろかったのは小僧に渡す前に近所の人に幼虫を見せたらみんな喜んだのよ。 誰一人「キモイ」なんて顔しなかった。 若いお母さんも、連れてた子供に「ほら、アゲハの幼虫よ」って教えてた。 子供は、初めて見るんだか「はあ?」って顔してたけど。 年配の人は皆ぱっと顔が輝いた。 あら、アゲハ!どこに居たの?!って。 とりわけたまたま通りかかったおじさん(知らない人)は、俺の家の山椒の木にもなあ、いたんだ、たくさん… それがある日サナギになってな… 俺は今日あたり蝶になるとよんで、朝早くから待っていたのさ… そしたらサナギがぱっくり割れてなあ… 翔び立ったのさ! 俺の目の前で… やっぱり山椒の木が一番さ… と、トクトクと語る…。 懐かしかったんだろうなあ… 昔は、世田谷にも普通に居たんだな… 子供のころは、普通に、原っぱがあって…。 三軒茶屋産まれのさんちゃん、無事に美しいアゲハになってください… そしてきょうだいを踏み殺した私の罪を許してください… アーメン。
PS. …しかしな。 蛾の幼虫なら踏み殺して何とも思わないのに(気分はよくないよ)アゲハな らそれかい! 差別だ! 昆虫界にも厳然たる格差が…苦笑。 そうそう、先日だって、ツタが元気ないから土をほじってみると、いるわい るわ10匹近いネキリムシのファミリーが。 「やはりおまいらか…よくも私のツタを」と、植木ばさみではさんで 真っ二つ !(気分はよくないよ) 次から次へ。 いる、いる… だんだん楽しく…(ないよ) …みーんな殺しちゃった。 ナウシカか? もしくはキリングフィールド。
「哀愁の渋谷」
先週の続き。 デビュー以来愛用してきた原稿用紙、BBケント紙(細め)が生産終了となった。 行きつけの画材屋さんの計らいで充分な量を賄ってもらった。 多分これで一生(?)困らないだろう… 足りなくなるほど消費して困ることになったらそれはそれで素晴らしい…笑。 行きつけと言っても半年に一度か二度行くくらいなのに、よく携帯電話にまで知らせてくれたものだ…感謝。 渋谷にあるその画材屋さんは、大学の頃からよく行ったものだ。 今はなき東急文化会館(現・ヒカリエ)の並び、一階は日本画用の岩絵の具が並んでいる… 一応美大では日本画学科だったものだからもっとお世話になっててもいいものだがなんせ岩絵の具はとても高価だったのでそうお手軽に買えるものではなく… ってその前にろくに日本画描いてないだろ!笑。 とにかく当時の私にとっては棚に並ぶ瓶に入った美しい絵具たちはほぼ「見るモノ」だったっけ… 色とりどり、濃淡と粒子の大きさでそれぞれグラデーション状になって並ぶ様は本当に美しかった…。 今思うと、岩絵の具にしても油絵具・水彩絵の具、さらにパステルや色鉛筆やさまざまな紙類まできちんと陳列されて売られている光景は、見るたびいつも「…平和だなあ、平和ってこういうことだよな…」と実感するものだ。 (毛糸とか布地なんかも同じく) 平和じゃなければこんなに豊かな取り揃えもないだろう、そしてそれを買いにくるお客さんも、絵を描くゆとりがあるという事だし。 絵を描く、って時間や財布はもちろん心にゆとりがないとね。 画材屋さんに行くと私はいつもごたごたしたコトは忘れられたものだ… ホッとするというか。 子供の頃にもどったみたいな… 漫画家になりたいなあ、いつかお財布の心配なくほしい画材がほしいだけ買えるようになれたら…って幸せな思いに満たされたものだ。 もちろんそれは今でも変わることなく…。 (お財布の心配はなくなったけど) 画材屋さんは私の憧れと夢、そして平和の象徴だ。 去年だったかな。 いつもの紙を注文にこの店に行き、いつもの年配の店員さんに応対してもらう… その時の会話。 「こちらが(紙の)表です、存じてらっしゃるかと思いますが念のため」 「ええ、大丈夫、表裏はわかりますよ」 「見てわかるものですか?」 「わかります。…紙って、紙屋さんではカットする時必ず表を上にしてカッ ターを下ろしますから、切り口を見れば表はほんのわずかですがカッターの 刃に押されて丸くなってるんです。 裏は、その逆で。 だから指で触ればかすかな違いがわかりますね…」 「ああ、そうだったんですか。そういえば紙屋さんもそんなコトを言ってま したっけ」 「あと、BBKENTって透かしも入ってますから。全紙(B1サイズ)の 数か所に。 だから原稿用紙サイズに切っちゃうと、透かしが入ってない部分にあたる こともありますが。」 「そうですね…」 「あと、表面を見てもわかります。」 「え、そうなんですか?表と裏で、どう違いますか?」 「ほんとうにかすかなんですが、表の方がなめらかというか…。 私も明るいところでよく見ないと気付かない時もありますが…」 「そうですか…」 …なんてBBケントの表裏談義をした帰り道。 BBケント紙の表裏の違い… 何かに似ている… 何だったっけ… ええとあの感じ… 何日かして気づいた。 そうだ、カステラだ! カステラの上のトコを思い浮かべてください。 焼き色のついた甘いところ。 お菓子を作る時、どろどろの生地をハトロン紙を敷いた容器に垂らし、焼くと、きれいにふっくら焼き色がつくでしょ。 紙の表は、あの感じ!あのふっくら感に似てたんだ! そして裏は、紙をはがしたカステラの底のあの感じ! あの平べったい感じ! そうそう、カステラの上面と底面に似てたんだ!! カステラだ、カステラだ!! 紙はうんと薄いけど… 紙もね、どろどろのケーキ生地みたいな樹脂(パルプ?)を網目に平らに伸ばして干すのよね… そうそう、似てる似てる。 次回注文する時にあの店員さんに教えてあげよう…うん、うん。 カステラよ、紙の裏表はカステラに似てるの…。 そのことを先日伝える事ができた。 最後の注文の時に。 ギリギリ間に合ってよかった…。 「ああ、カステラでしたか。なるほど、それならわかります。 へえ、カステラみたいなんですか…うまい例えですわね…」 と喜んでくださった。 あの店員さん。 紙は注文することはなくなったけど他のものを買いに行くことはある。 きっとまたおしゃべりすることもあるね…。 「ねえ!この店はなくなっちゃったりしないよね!?」 「ええ、まだ何とか。(苦笑)」 「もしウエマツがなくなったら私自殺するからね!」 笑…。 専門店も専門の店員さんもどんどん消えていく御時世。 10代の頃からうろついてた渋谷の街がどんどん変わっていく… 憧れの街だった渋谷… 気が付けば、ウエマツ以外はほとんど行かなくなってもう十何年もたっていたわ。 電車で5分なのにね。ふう。
PS. たまたま乗ったタクシーの運転手さんが東急本店を指さして、 「…なんでこの店つぶれないんですかね?私昔から見てるけど お客さんが居たとこほとんど見たことないけど」 「…渋谷の七不思議かしらね。」笑。
「とうとうこの日が…」
…来てしまった…。 いつか来ると思ってはいたけど、とうとう…。 なんちゃって、何が来たかというと、私がデビュー以来ずっと愛用してきた漫画原稿用紙の「BBケント細め」が生産終了! してしまったのらー!!! ああーー!!!! 悲しい…… 今日はBBケント(細め)終了記念日… くすん。 10代の頃、雑誌の漫画の描き方みたいなページに漫画は「上質紙」もしくは「ケント紙」に描きましょう、と載っていたので近所の文房具店で買ったの。 「あ、これで漫画を描くんだ」と小学生の私はドキドキしたものだ。 投稿時代はそれで描いていたけれどそのうちプロの作家さんの仕事場などをのぞくうちにこの紙に出会い、その描き味の心地よさに感銘を受け、以来この紙以外で描くことはなかった。 ずーっとずーっとこの紙で漫画を描いてきた。 何百枚、何千枚…かはわからないけどきっと相当な数になっているはず。 自分が単行本をどれくらい出したかはっきりした数はわからず。 でもざっくり数えると多分百冊前後だろう。 一冊につき200〜220枚くらいの枚数なので原稿の数は… 2万から2万2,3千枚くらいかな。 (少なく見積もって…)あらあら随分たくさん…。 このBBケント紙は、画用紙の素朴感とケント紙の丈夫さを兼ね備えた上質な紙。本来は水彩画用らしい。 その丈夫さと言ったら、何百回(笑)消しゴムをかけてもケバ立つ事はなく、Gペンでペン入れすれば独特のカリカリ感、心地よいひっかかりが手にやさしく… ツルツルだと肩が凝る感じで…。 とにかくこの紙以外は有り得ない!ってずーっと購入してきた唯一無二の原稿用紙だった。 もちろん今でも使っている。 多少高価(1枚60〜100円)だけど紙は贅沢をしたかった… 新人の頃から。 もっとも、原稿用紙にこだわる漫画家さんは私の周りにはほとんどいない。 マガジン時代は、皆さん編集部で無料でもらえる「特製原稿用紙」で執筆されていたっけな。 どんなに売れっ子になっても、多くの方は「だってタダだから!」って。笑。 今では画材屋さんに行けばいくらでも漫画用原稿用紙、って売ってるのよね。 たいていは上質紙135g。 私はあの水色の枠線がいやで、必ずBBケントを買って自分で千枚通しで穴あけて鉛筆で枠線を入れ… この作業を「トンボを入れる」って業界用語で言うんだけど、「ヘイウチサン以外に見たことありません!」って後輩に言われたっけな…。 真っ白い原稿用紙に向かい、「ネームはできた、さあこれから作画だ!」と気を引き締めたものだ。 それは今でも同じ…。 その紙様が、15年くらい前かな… 突然画質が劣化したことがあって。 びっくりしていつも行く画材屋さんにクレームを入れたらどうやらイギリスの本社で社長が代替わりして、新社長があまりこだわらない方らしい、とか何とか…定かではないけどとにかく紙の質が下がって。 しかも、紙の質にムラがあったりして、あまり大量に仕入れる事は控えて、割とマメに少しづつ購入するようにして…。 ここ数年は紙質は安定していたんだけど…。 スクリーントーンや、漫画製作にかかわるいろいろなものがどんどん生産中止になってきて、廉価版も出てきたけど質の面から言えば…なんてことが続き、いつかこの紙も終わっちゃうのかな?って何年前からか危惧してきたんだけどとうとう…。 漫画製作現場もどんどんデジタル化してきて、スクリーントーンはもちろん、ペンも絵具も、紙さえもすべてソフトが代替するようになってけっこう経つ。 完全アナログ派はもはや少数だろう…。 (私は半デジ、くらいかな。紙と主線はアナログ) で、とうとうこの日が来てしまった。 行きつけの画材屋さんが携帯にまず知らせてくれて、 「今ならある程度の量は確保できます!一か月くらいは問題はないけれど、でもその在庫が無くなれば終了です」 永久にこの地上よりBBケントは消える…。 説明する画材屋さんも真剣な表情だ。 私が漫画家だ、って事は知っているし本名のまま注文するけどどんな漫画を描いているかは多分知らない… 別に支障はない。 聞いたその日に買いに行く。 最後の注文だ。 でも果たしてどれくらいの量を買ったものか…。 今「漫画オンウェブ」で月産にならすと25.6枚くらい。 多分これ以上に増える事は多分ないだろう。 で、あとどれくらい自分は描くのかな? わからない…。 ウェブなので、描こうと思えばいくらでも描けるけど…。 その場で悩んだ末、ウン年分の枚数を注文。 これが無くなったらその時に考えよう。 その数を消費したら、それはそれですごい事かもしれないし。 (って量の枚数を注文したの) うん。 私は紙を無駄に捨てた事は1回もなかった。 少し前に実家に行ったら25年くらい前の原稿用紙を2,30枚見つけて、それも全部「EVIL」で使った。 コマの直しだったら切り貼りをしたし、描き直す時も全部消しゴムをかけてまっさらに戻した。 その消しゴムに耐えるだけの強さのある紙だった。 30年以上私のペンタッチを支えてくれた。 渋谷の画材屋さん、真っ先に教えてくれてありがとう。 届いたら一枚一枚大切に描きます。 愛しい紙、ありがとう、ありがとう。 本当にいい紙だった。……
PS. この画材屋さんとのエピソートは来週に続く。