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2018年10月11日

「哀愁の渋谷」

 先週の続き。
デビュー以来愛用してきた原稿用紙、BBケント紙(細め)が生産終了となった。アイコン
行きつけの画材屋さんの計らいで充分な量を賄ってもらった。
多分これで一生(?)困らないだろう…
足りなくなるほど消費して困ることになったらそれはそれで素晴らしい…笑。

 行きつけと言っても半年に一度か二度行くくらいなのに、よく携帯電話にまで知らせてくれたものだ…感謝。
渋谷にあるその画材屋さんは、大学の頃からよく行ったものだ。アイコン
今はなき東急文化会館(現・ヒカリエ)の並び、一階は日本画用の岩絵の具が並んでいる…
一応美大では日本画学科だったものだからもっとお世話になっててもいいものだがなんせ岩絵の具はとても高価だったのでそうお手軽に買えるものではなく…
ってその前にろくに日本画描いてないだろ!笑。

 とにかく当時の私にとっては棚に並ぶ瓶に入った美しい絵具たちはほぼ「見るモノ」だったっけ…
色とりどり、濃淡と粒子の大きさでそれぞれグラデーション状になって並ぶ様は本当に美しかった…。
今思うと、岩絵の具にしても油絵具・水彩絵の具、さらにパステルや色鉛筆やさまざまな紙類まできちんと陳列されて売られている光景は、見るたびいつも「…平和だなあ、平和ってこういうことだよな…」と実感するものだ。アイコン
(毛糸とか布地なんかも同じく)
平和じゃなければこんなに豊かな取り揃えもないだろう、そしてそれを買いにくるお客さんも、絵を描くゆとりがあるという事だし。
絵を描く、って時間や財布はもちろん心にゆとりがないとね。

 画材屋さんに行くと私はいつもごたごたしたコトは忘れられたものだ…
ホッとするというか。
子供の頃にもどったみたいな…
漫画家になりたいなあ、いつかお財布の心配なくほしい画材がほしいだけ買えるようになれたら…って幸せな思いに満たされたものだ。アイコン
もちろんそれは今でも変わることなく…。
(お財布の心配はなくなったけど)
画材屋さんは私の憧れと夢、そして平和の象徴だ。

 去年だったかな。
いつもの紙を注文にこの店に行き、いつもの年配の店員さんに応対してもらう…
その時の会話。

「こちらが(紙の)表です、存じてらっしゃるかと思いますが念のため」
「ええ、大丈夫、表裏はわかりますよ」
「見てわかるものですか?」
「わかります。…紙って、紙屋さんではカットする時必ず表を上にしてカッ
 ターを下ろしますから、切り口を見れば表はほんのわずかですがカッターの
 刃に押されて丸くなってるんです。
 裏は、その逆で。
 だから指で触ればかすかな違いがわかりますね…」
「ああ、そうだったんですか。そういえば紙屋さんもそんなコトを言ってま
 したっけ」
「あと、BBKENTって透かしも入ってますから。全紙(B1サイズ)の
 数か所に。
 だから原稿用紙サイズに切っちゃうと、透かしが入ってない部分にあたる
 こともありますが。」
「そうですね…」
「あと、表面を見てもわかります。」
「え、そうなんですか?表と裏で、どう違いますか?」
「ほんとうにかすかなんですが、表の方がなめらかというか…。
 私も明るいところでよく見ないと気付かない時もありますが…」
「そうですか…」
…なんてBBケントの表裏談義をした帰り道。
BBケント紙の表裏の違い…
何かに似ている…
何だったっけ…
ええとあの感じ…
何日かして気づいた。

 そうだ、カステラだ!

 カステラの上のトコを思い浮かべてください。
焼き色のついた甘いところ。
お菓子を作る時、どろどろの生地をハトロン紙を敷いた容器に垂らし、焼くと、きれいにふっくら焼き色がつくでしょ。
紙の表は、あの感じ!あのふっくら感に似てたんだ!
そして裏は、紙をはがしたカステラの底のあの感じ!
あの平べったい感じ!

 そうそう、カステラの上面と底面に似てたんだ!!
カステラだ、カステラだ!!
紙はうんと薄いけど…
紙もね、どろどろのケーキ生地みたいな樹脂(パルプ?)を網目に平らに伸ばして干すのよね…
そうそう、似てる似てる。
次回注文する時にあの店員さんに教えてあげよう…うん、うん。
カステラよ、紙の裏表はカステラに似てるの…。アイコン

 そのことを先日伝える事ができた。
最後の注文の時に。
ギリギリ間に合ってよかった…。
「ああ、カステラでしたか。なるほど、それならわかります。
 へえ、カステラみたいなんですか…うまい例えですわね…」
と喜んでくださった。
あの店員さん。
紙は注文することはなくなったけど他のものを買いに行くことはある。
きっとまたおしゃべりすることもあるね…。

「ねえ!この店はなくなっちゃったりしないよね!?」
「ええ、まだ何とか。(苦笑)」
「もしウエマツがなくなったら私自殺するからね!」
笑…。

 専門店も専門の店員さんもどんどん消えていく御時世。アイコン
10代の頃からうろついてた渋谷の街がどんどん変わっていく…
憧れの街だった渋谷…
気が付けば、ウエマツ以外はほとんど行かなくなってもう十何年もたっていたわ。
電車で5分なのにね。ふう。

 

PS.
 たまたま乗ったタクシーの運転手さんが東急本店を指さして、
「…なんでこの店つぶれないんですかね?私昔から見てるけど
 お客さんが居たとこほとんど見たことないけど」
「…渋谷の七不思議かしらね。」笑。

 

夏子

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
2018年10月4日

「とうとうこの日が…」

…来てしまった…。アイコン
いつか来ると思ってはいたけど、とうとう…。

 なんちゃって、何が来たかというと、私がデビュー以来ずっと愛用してきた漫画原稿用紙の「BBケント細め」が生産終了!
してしまったのらー!!!
ああーー!!!!
悲しい……
今日はBBケント(細め)終了記念日…
くすん。

 10代の頃、雑誌の漫画の描き方みたいなページに漫画は「上質紙」もしくは「ケント紙」に描きましょう、と載っていたので近所の文房具店で買ったの。
「あ、これで漫画を描くんだ」と小学生の私はドキドキしたものだ。アイコン
投稿時代はそれで描いていたけれどそのうちプロの作家さんの仕事場などをのぞくうちにこの紙に出会い、その描き味の心地よさに感銘を受け、以来この紙以外で描くことはなかった。
ずーっとずーっとこの紙で漫画を描いてきた。
何百枚、何千枚…かはわからないけどきっと相当な数になっているはず。
自分が単行本をどれくらい出したかはっきりした数はわからず。
でもざっくり数えると多分百冊前後だろう。
一冊につき200〜220枚くらいの枚数なので原稿の数は…
2万から2万2,3千枚くらいかな。
(少なく見積もって…)あらあら随分たくさん…。

 このBBケント紙は、画用紙の素朴感とケント紙の丈夫さを兼ね備えた上質な紙。本来は水彩画用らしい。
その丈夫さと言ったら、何百回(笑)消しゴムをかけてもケバ立つ事はなく、Gペンでペン入れすれば独特のカリカリ感、心地よいひっかかりが手にやさしく…
ツルツルだと肩が凝る感じで…。
とにかくこの紙以外は有り得ない!ってずーっと購入してきた唯一無二の原稿用紙だった。
もちろん今でも使っている。アイコン
多少高価(1枚60〜100円)だけど紙は贅沢をしたかった…
新人の頃から。

 もっとも、原稿用紙にこだわる漫画家さんは私の周りにはほとんどいない。
マガジン時代は、皆さん編集部で無料でもらえる「特製原稿用紙」で執筆されていたっけな。
どんなに売れっ子になっても、多くの方は「だってタダだから!」って。笑。
今では画材屋さんに行けばいくらでも漫画用原稿用紙、って売ってるのよね。
たいていは上質紙135g。
私はあの水色の枠線がいやで、必ずBBケントを買って自分で千枚通しで穴あけて鉛筆で枠線を入れ…
この作業を「トンボを入れる」って業界用語で言うんだけど、「ヘイウチサン以外に見たことありません!」って後輩に言われたっけな…。
真っ白い原稿用紙に向かい、「ネームはできた、さあこれから作画だ!」と気を引き締めたものだ。
それは今でも同じ…。

 その紙様が、15年くらい前かな…
突然画質が劣化したことがあって。
びっくりしていつも行く画材屋さんにクレームを入れたらどうやらイギリスの本社で社長が代替わりして、新社長があまりこだわらない方らしい、とか何とか…定かではないけどとにかく紙の質が下がって。
しかも、紙の質にムラがあったりして、あまり大量に仕入れる事は控えて、割とマメに少しづつ購入するようにして…。
ここ数年は紙質は安定していたんだけど…。

 スクリーントーンや、漫画製作にかかわるいろいろなものがどんどん生産中止になってきて、廉価版も出てきたけど質の面から言えば…なんてことが続き、いつかこの紙も終わっちゃうのかな?って何年前からか危惧してきたんだけどとうとう…。アイコン

 漫画製作現場もどんどんデジタル化してきて、スクリーントーンはもちろん、ペンも絵具も、紙さえもすべてソフトが代替するようになってけっこう経つ。
完全アナログ派はもはや少数だろう…。
(私は半デジ、くらいかな。紙と主線はアナログ)

 で、とうとうこの日が来てしまった。
行きつけの画材屋さんが携帯にまず知らせてくれて、
「今ならある程度の量は確保できます!一か月くらいは問題はないけれど、でもその在庫が無くなれば終了です」
永久にこの地上よりBBケントは消える…。
説明する画材屋さんも真剣な表情だ。
私が漫画家だ、って事は知っているし本名のまま注文するけどどんな漫画を描いているかは多分知らない…
別に支障はない。

 聞いたその日に買いに行く。
最後の注文だ。
でも果たしてどれくらいの量を買ったものか…。
今「漫画オンウェブ」で月産にならすと25.6枚くらい。
多分これ以上に増える事は多分ないだろう。
で、あとどれくらい自分は描くのかな?
わからない…。
ウェブなので、描こうと思えばいくらでも描けるけど…。

 その場で悩んだ末、ウン年分の枚数を注文。
これが無くなったらその時に考えよう。
その数を消費したら、それはそれですごい事かもしれないし。アイコン
(って量の枚数を注文したの)
うん。

 私は紙を無駄に捨てた事は1回もなかった。
少し前に実家に行ったら25年くらい前の原稿用紙を2,30枚見つけて、それも全部「EVIL」で使った。
コマの直しだったら切り貼りをしたし、描き直す時も全部消しゴムをかけてまっさらに戻した。
その消しゴムに耐えるだけの強さのある紙だった。
30年以上私のペンタッチを支えてくれた。

 渋谷の画材屋さん、真っ先に教えてくれてありがとう。アイコン
届いたら一枚一枚大切に描きます。
愛しい紙、ありがとう、ありがとう。
本当にいい紙だった。……

 

PS.
 この画材屋さんとのエピソートは来週に続く。アイコン

 

夏子

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
 
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